機巧少女は傷つかない 16 上 Facing"Machine doll II"

著/海冬レイジ イラスト/るろお レーベル/MF文庫J

「みんな、俺の撫子(いもうと)にしてやる!」

「戦隊」の6姫を解体して、パーツ足りないから夜々ちゃんを解体して撫子ちゃんを作り上げるシーンの雷真のセリフ。
ついに天全を倒して、今までのことをすべて聞かされて、でも限界を超えて戦ってきた夜々が死んでしまって、しかもその夜々を解体して生体部品を取り出して……っていう雷真が超辛くて真面目なシーンだったのに笑ってしまった(^ω^)
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雷真がこれまで自分の命を顧みずに仲間のために死地に飛び込んでいたのは、撫子を助けられなかったことへの贖罪、代替行為でした。
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赤羽天全の6体の禁忌人形「戦隊」は、同時に赤羽撫子の各部位を保管するための容器でした。
反魂(生き返り)は不可能だけど、裏を返せばどんな姿であれ死んでいなければ可能性があるわけです。
置換魔法で天全と撫子の魂を置換し、戦隊から撫子の身体を再生してそこに魂を入れるのが雷真の役目。
全ては天全がいざなぎ流をあざむき、撫子を生かすための壮大な計画だったのだ!
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赤羽雷真が魔術師の到達点である第八階梯「心眼」にたどり着いたことで、雪月花がついに真価を発揮します。
現象という結果ではなく原理への理解へ至った雷真。
原子レベルで対象に干渉するいろりの「氷面鏡」は、細胞そのものから直接熱を奪い、何の予兆もなく敵を無力化します。
小紫の「八重霞」は認識そのものに干渉し、最高位の魔術師の心眼すら欺きます。
夜々の「金剛力」は接触した瞬間に相手の全ての攻撃に干渉して無力化。故に得られるのが何よりも硬いという結果。
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能力を全開放した雪月花はマジ半端なかった。
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神性機巧(マシンドール)が遂に誕生。
その姿かたちは、白装束の夜々。
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天全との戦いと、撫子への生体部品供与により相棒の夜々を自ら切り刻んで失意のどん底にあった雷真を立ち直らせたのは、セカンドヒロインのシャルでした。告白して想いを告げて、同時に今まで雷真が渡英してから守ってきたたくさんの人や想いについて必死に伝えたのでした。
もちろんシャルは振られてしまったんですが、主人公を立ち直らせるロールを1巻からいる人気ヒロインが担い、同時にその関係にしっかりとケリをつけた素敵なシーンでした。
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黒薔薇さんが結構いい人だったのもあるけど、今までは自分の信念を何より優先していた雷真が、黒薔薇に関しては完全に軍門に下ることになりました。大願成就を目前に、回復してくれて魔力まで融通してくれたしね。
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核心に迫るお話が満載だったり、兄と弟だけで行われる夜会の最終決戦だったり、ついにマシンドールが誕生したりとクライマックス全開で面白かった。
満を持して紫薔薇・綺羅とマシンドールに挑む同時発売の最終巻がとても楽しみです。