自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?

著/三河ごーすと イラスト/ねこめたる レーベル/MF文庫J

学業、運動、家柄、あらゆる分野のエリートだけを集めた日本最高峰の名門校・獅子王学園。だがその実態は、ゲームの結果ですべてが評価される弱肉強食の学園。絶対的な強者――獅子のみが生き残れる修羅の世界だった。裏世界のゲームで常勝無敗の伝説を残しながらも、面倒のない普通の人生を歩みたい主人公・砕城紅蓮は、入学試験で手を抜き、目論見通り最低位のFランクに認定される。しかし兄を心から愛する血の繋がった妹・砕城可憐と再会し、事態は急変。そして学園の『悪意』が可憐を襲ったとき、紅蓮は真の実力を発揮する――!

MF文庫J4月新刊。
タイトルとあらすじを見て「ノーゲーム・ノーライフ」と「魔法科高校の劣等生」を足して、2じゃなくて5で割ったような作品でしょどうせ(笑)とか思ったあなた!
実はボクも読む前はそう思っていましたごめんなさい。
でもそれは確かに先入観いっぱいの色眼鏡で見たボクも悪いけど、そういう風に連想させるいかにもなタイトルの付け方も良くないんじゃないかな、って思うんです。
個人的にはもうちょっとスタイリッシュでクールなタイトルのほうが好きです。
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閑話休題
まずガチでゲーム(特殊遊戯)の結果で人生が変わってしまう世界のお話です。闇のゲーム的なあれです。
第3次世界大戦を経て、暴力を伴わない知的遊戯が国家間の代理戦争へと昇華された時代に、世界の覇権を競う闇の舞台で最強無敗を誇った主人公が、殺伐とした生きるか死ぬかの世界から足を洗って普通の日常を求めて学園にやってくるところから話は始まります。
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しかし闇世界での経歴こそすごいものの、表の世界では、つまり学歴でいうと義務教育すら放棄した小卒な主人公。そんな主人公が法律を捻じ曲げて入学できたのは、遊戯至上主義の学園しかなかったわけです。
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そしてこの学園は本当に遊戯始業主義でした。他の作品のようになんちゃってではありません。
ここでは例えば序盤に主人公に挑んでくる高貴な金髪縦ロール決闘お嬢様がいます。バトルものライトノベルの定番かませチョロインですが、このヒロインは主人公に負けた後、他の奴らにもカモにされ、ブラウスや下着を着る権利、スカートや靴下をはく権利etc...全てを根こそぎ奪われて、SM調教をうけたうえ、普段は首輪に制服の上着だけで学園生活をさせられます。
人としての尊厳を踏みにじられメス豚になりさがった結果、なんということでしょう、最後にはことあるごとにすぐに裸になって罰を受けようとする変態ヒロインになってしまいました。
最後は一応ギャグという形で終わらせていたものの、ガチで人権を蹂躙するゲーム至上主義学園で、最強主人公がむかつく相手にその力を行使する、そんなお話です。
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物語全体を通してのラスボスっぽい生徒会長以外は、最強主人公が圧倒しそうな感じなので、2巻以降どんな展開になるのかちょっと楽しみです。AIつかうチーターなんかも出てきそうですね。
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1巻のボスは生徒会役員。心臓の放つ特殊な音波から相手の思考の正誤を読み取る能力者。
この特殊能力者に対して、二人羽折り作戦で心音を誤魔化すことで勝ちます。
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ほんとかなりハードな世界観です。
この生徒会役員は幼いころに貧乏で辛酸を舐め、金持ちに対して異常なほどの憎しみを抱いています。もちろん負けても更生するとかはありません。ただ全てを失った敗者として最底辺カーストに落ちることになりました。
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主人公自身もその才能と特殊な家柄のせいで、他人の人生を破滅させ踏みにじることで生きることに嫌気がさして普通の日常を求めており、行動原理も俺の目の前で俺のムカつくことをするから実力行使で止める、ただそれだけ。結果的にヒロインを救うことになっても、救うために戦うなんて気持ちは基本的にありません。シビアに生きてます。
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つまり誰かの為に力を振るうこと、それ自体がもう主人公は嫌になっているわけです。主人公は、自分と可愛い妹のためだけに力を使います。
だから妹が他人をちょっと利用した時も、ちゃんとしかって妹のやり方を正しました。いいお兄ちゃんです。地の文では傲慢とも書かれるその唯我独尊の強者たるに相応しい生き方は、変に正義感を振りかざす軟弱主人公よりも非常に好感が持てました。
面白かった。