僕は友達が少ない 4

著/平坂読 イラスト/ブリキ レーベル/MF文庫J

本の学校ではかつて十年近くにわたっていじめによる自殺の無い期間がありました。それは教員が先生と呼ばれる立場でありながら自己保身に走り事実そのものを隠蔽してきたり、故意に見過ごしていたのにいじめは認識していなかったと言い張ってきたせいでもありました。そのようにいじめというのは学校という警察権力の及びにくい特殊な環境において非常に恣意的で曖昧な形で存在しており(報道されるのは自殺の時くらいで、被害者は死んでしまっていて証言できない)、日教組をはじめとして保身に走る教育側の卑劣な隠蔽工作のせいで真実が語られることはほとんどありませんでした。今年の6月にも担任がいじめを認識しながら自己の判断で黙認し校長に報告しなかったせいで、前途有望な若者が自ら命を絶った悲劇があったのはその最たる例でしょう。個人的には行為の程度にわけでちゃんと暴行、傷害、集団無視など具体的に表記しそれらが法に触れる事を強調すべきではないかと思います。万引きなんかもそうですね。窃盗や強盗など具体的に表記すべきだと思います。
前置きが長くなりましたが、この作品はいじめを取り扱った作品です。社会適合性を欠いたメインヒロイン三日月夜空が同じように社会適合性を欠いた隣人部という社会不適合者集団の中で、より弱い者に対し言われなきいやがらせや暴言、暴力を振るいます。特に主人公をめぐって恋のライバル的な存在の柏崎星奈に対しては本当に酷く、例えばあだ名は「肉」です。そして主人公の羽瀬川小鷹も目の前の暴言や暴力をいじめだと認識しながらそれを笑って見ているのがなんとも不快な感じを与えてくれます。
さらにそのいじめの被害者もそういった行為を受けるような素地があるからいじめられるのだというのがこの4巻の主張で――もちろんそれも感情論を抜きにすればある意味正しい面もあるのでしょうが――それでも僕は人の尊厳を踏みにじるような行為はすべきで無いと思うし、この愚劣なキャラたちを反面教師に人の気持ちを慮れる人間になろうと思わせられる、そんな一冊でした。
またメインヒロインの夜空は、一般的な友人関係についてやたらと希薄な人間関係だの上辺だけの付き合いだの本当の自分を出していないだの上から目線で見下ろしてますが、本能を理性で制御し共通のルールにおける社会という枠組を作った事こそが人間の英知であるわけで、本当の自分、言い換えれば本能のままをさらけ出して理解してもらえなければ友人で無いと言うのは、小さな子供が無条件の愛を母親から受けるのとなんら変わりなく、単に人間的に未熟であり、まさにそれこそが彼女が社会不適合者たる所以なのでしょう。色んなところに折り合いをつけてどうにかこうにかやっていくのが生きるって事じゃないかと僕は思います。
友人という定義も問題。自分で理想の友人像を作り上げ、それを相手に押し付けるだけ。理想の友人関係でなければそれは三日月夜空の友人ではないから。それも甘え。一般的には友人以上の関係がそこにあるのに、それを認めず自分がいかに恵まれて無いかを自慢するのは見ていて痛々しい。