魔力融資が返済できない魔導師はぜったい絶対服従ですよ? 1 じゃあ、可愛がってくださいね?

著/真野真央 イラスト/シソ レーベル/MF文庫J

たりない魔力を融資します――。魔力量は規格外なのに魔法が使えない融資屋のヒカゼは、着いたばかりの魔法大国アリアウェルの創国祭で少女のスリに遭う。追い詰めると彼女はアミカと名乗り、逆にヒカゼに助けを求めてきた!? これは、商機(ニヤリ)!早速ヒカゼは、神魔導師を自称するくせに絶対魔力量の少ないアミカを顧客第一号として大量の魔力を融資するのだが……。なにこの不良債務者、パンツまで差し押さえたのに開き直りやがったよ!「私このまま犬でいいんじゃないかな?」「……おまえプライドはないのか」ヒカゼと不良債務者どもの破廉恥&波乱の日々が幕を開く!

MF文庫J10月新刊。
万能の力を持つ魔法が当たり前のファンタジー世界で、無尽蔵の魔力量を持つものの魔法が使えない主人公が、魔力を元手に魔力融資行を営むお話。
ネタバレしてるので未読スルーオナシャス
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序盤は徹底して軽いノリだけど、実は主人公には誰にも明かさない悲願と出生の秘密があってというのが最後に明らかになります。
主人公が魔法を使えない理由なんかもその辺が関係。
魔法が使えない代わりに主人公だけが持つ、呪いの絶対強制力を利用して敵を騙して契約結んで強制徴収する錬魔術が強すぎて困る。
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でまぁ、この巻でやったことは、最強主人公が契約の文言を巡る騙し合いで勝つって頭脳ゲームだったと思うんですが、契約の締結に際して説明義務がなく、相手が単に読み飛ばしたところで後からいやいやここに小さく書いてあるでしょとやるため、格好良さとかスマートさはあまりありません。
ラスボスも同じようにして脳筋を騙しただけでした。主人公の凄さを見せるシーンのはずですが、いまいち感じられません。
相手の無知や過失に付け込むだけで、つまり小学生を堂々論破する大人的なお話です。
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そして序盤はノリのいいコメディだったのに、途中からどんどん増えてくるシリアスストーリー。
で、シリアスは上記のバカを騙す展開なのでいまいち盛り上がらず、古代の戦略級兵器の復活を巡る争いを、最強主人公が淡々と、本当にあっさりと解決しちゃいます。
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しかしこれをもってこの作品が面白くないと断ずることはできません。
なぜなら作品テーマは「駄犬ヒロインかわいい」だからです。
駄犬ヒロインことアミカは、脅そうが怒ろうが反省したふりだけでどこ吹く風。
どんな状況でもプラス思考で環境適応する鋼メンタルで、隙あらばうまいこと一発逆転で債務をチャラにすることしか考えていません。
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金返す気無いなら犬になれ、返事はワンだ →慣れちゃった、むしろ責任もって飼ってね
金返す気無いならパンツはくな →慣れちゃった、むしろ快感なので寝る時は全裸にすらなる
わかったからせめて返済プラン考えろ →額がでかすぎてぶっちゃけ返せそうにないのでもう今の境遇でいいよ?
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この駄犬ヒロインは大変可愛かったので、もうちょっとストーリーにも華があればな、と。
あと主人公も一緒に助けてもらったのに40億の負債を全額一方的にアミカに背負わせたのはちょっとおかしかったような。