Q.もしかして、異世界を救った英雄さんですか? 2 A.それは、ずっと昔の話です。

著/弥生志郎 イラスト/フライ レーベル/MF文庫J

MF文庫J9月新刊。
主人公の成長や葛藤といった重厚で中身のあるライトノベルが書きたいんだ、という作者の思いが色々と伝わってくる作品。
ただですね、全力だと地球を割るレベルの攻撃力&死んだ瞬間に時間を巻き戻す不死の秘術を授けられた最強主人公にそれをやらせるのは、なかなか難しいんじゃないかと感じました。
「持てる者、持たざる者」論で言う前者の抱える悩みって、共感を得にくいと思うんです。だってほとんどの人は後者だから。強くなりたい、特別になりたいって普通の人は思ってるわけです。ちっぽけな自分それ自体が悩みになるわけです。でもって最強主人公ってのは、その対極にあるわけです。
結局、最強さんがどれだけ真剣に悩んでようが、でもあなた異次元で桁違いに最強で無敵やん?って言われちゃうわけです。
悩むことさえできずに蹂躙され踏みにじられるのと、自らの力で生存を勝ち取れてその上さらに悩むことまでできるのとではどちらが幸せかと問われたら、普通は後者が幸せなわけで、そんな一般論をねじ伏せる形で「持てる者」の答えを一般国民に共感できるように提示するのは、本当に難しいことだと思います。
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最後は主人公は過去の呪縛から解き放たれ、地球の神霊代行としてハーレムヒロイン3人と各異世界を転戦することになりました。