魔弾の王と戦姫<ヴァナディース> 5

著/川口士 イラスト/よし☆ヲ 挿絵/柳井伸彦 レーベル/MF文庫J

アニメ絶賛放映中の英雄譚、その第一章ブリューヌ内乱編のクライマックス編。
ティグルが王都ニース近くの野戦でついにティナルディエ公と雌雄を決します。
表紙は6人目の戦姫ヴァレンティナ。
よし☆ヲ先生体調不良のため、挿絵のイラストレーターが変わっています。
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物語の発端となった1巻における様々な出来事。
エレンがティグルに力を貸した理由、ティナルディエ公が辺境のアルサスを攻めた理由、開戦と同時に王子が討たれた理由、ファーロン王が病に伏せた理由などなど様々な事が明らかになります。
当然ネタバレしてるのでアニメ組の人は絶対にスルーしてね。
多分ここがアニメ最終回だから。
以下、ネタバレ満載のメモ。
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エレンがティグルを助けたのは、国境付近のアルサスを絡め取ることで、合法的にブリューヌ王都ニースとジスタート王都シレジアを結ぶ街道を整備したかったから。エレンの治めるライトメリッツはちょうどその中間点にあるため、街道が整備されて王都間の交易が盛んになれば莫大な恩恵を受けることができるのです。
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ティナルディエ公がアルサスを攻めたのはジスタートとの国境に緩衝地帯を作りたかったから。アルサスを焦土にして緩衝地帯にすることで、ジスタートに攻め入っても利益はありませんよ、と思わせるため。
彼自身はブリューヌのためを思っての行動でした。もちろん先祖代々の土地で焦土作戦なんてやられた方は堪らないわけですけれども。
ティナルディエ公は弱者に容赦しない性格なので手っ取り早く焼き払おうとしたものの、そこにティグルという死の神が神具である黒弓の担い手がいたことが誤算でした。
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後方にいたはずの王子が開戦早々討たれたのは、王座を抱かんと野心を抱いたティナルディエ公とガヌロンによる謀殺。
側仕えの決死の奮戦で王子がどうにか逃げ延びたことで、ティナルディエ公は王子の口封じのために王都ニースへ進軍するティグル軍と短期決戦を挑む必要が生じました。
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ファーロン王はガヌロンにより薬で破壊されてました。
ガヌロンは人では無く化物で、これからはガヌロンと世界を救うための戦いが始まりそうです。
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ティナルディエ公を討ったティグルは王都ニースへと凱旋。
ティナルディエ公との私闘だといろいろと問題があるため、形式上はムネジオルを寡兵で撃退した救国の英雄として。
そのどさくさで、王子はレギン王女として正式に承認されました。性別を偽ったのは神託だった(ことにした)から仕方ないな!教会にも金を積んだのでしょう。
ブリューヌは南部辺境をジスタートに割譲。アルサスはレギン王女とエレオノーラの共同統治に。国家間の割譲では無く、ブリューヌ王女とジスタート公主との契約という形になりました。これは権力基盤の弱いレギン王女の正統性をジスタートに担保させるため。
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ファーロン王によって、ティグルは「月光の騎士(リュミエール)」の称号を拝命しました。リュミエールは過去に一例しかいないマイナーな称号ながらも、その一例となった騎士は後にブリューヌ王女を娶り国王となったそうです。
そんな感じで各方面から様々に既成事実を作られつつあるティグルですが、一番の発端であるエレンとの奴隷契約は3年の期限付きとなりました。ブリューヌ救国の英雄を他国が縛り付けるのは新たな火種になること間違いなしですからね。
ということでティグルはしばらくジスタートに移ることに。
その間にレギン王女は権力基盤を固めつつ、ティナルディエ公に従って敗北しその原因であるティグルに恨みを持つブリューヌ貴族たちの力を削いでいくのでしょう。
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そんな感じの、第一章「ブリューヌ内乱編」の完結編でした。
面白かった。