妄想少女(もうそうがーる) そんなにいっぱい脱げません!?

著/東亮太 イラスト/ちこたむ レーベル/角川スニーカー文庫

二次元の美少女が画面から飛び出して尽くしてくれるという何とも気持ちの悪いお話で、物語のテーマは二次元における萌とエロの関係、特に萌えイラストにおけるエロの否定。
確かに二次元における萌とエロの関係に焦点を当てた作品としてその問題提起自体は評価するものの、エロが何故萌と比べて劣後するのかという理由が、エロはエロだから駄目ってのがあまりにも酷くて正直失笑せざるをえませんでした。っていうか葉鍵ディスってるんだよね? Piaキャロ2が初エロゲ、ホワイトアルバムLEAFにはまって痕、雫、ToHeartをリアル世代として体験してONEやKanonで涙した葉鍵っ子をディスってるんだよね?
そういう事ならぱにーに(=゚ω゚)ノは一エロゲーマー旧葉鍵っ子としてこの一方的かつ侵略的な宣戦布告に対して断固抵抗しようではありませんか!
そう、これはせいせんである!
全国のエロゲーマーよ、葉鍵っ子よ、立ち上がれ!!
あ、聖戦じゃなくて性戦ね。エロゲ的な意味で。それにイスラム教徒じゃないからね。
閑話休題
そもそも作者の芸術関係に対する認識が甘すぎるのが目に付きます。
例えば、これ。
『絵はあくまで外面的なものだから、内面となる性格までは描写できない』
その絵が描かれた背景、社会情勢、作者の思想なんかを勉強、理解して絵を考察するからこそ、その内面性やら芸術性やらが認められ評価されるのに、絵は外面的なものに過ぎず内面は描写できないとか余りにも不見識といわざるを得ません。ピカソゲルニカなんかはその良い例でしょう。予備知識もなしに見た人はただの下手糞な絵としか思わないでしょうが、時代背景や描かれた意図を読み解けばその中にある主張や思想がこれでもかと言う程に表現されているのが分かるわけで、絵が単なる外面的なものに過ぎないなんてことは余りに見当外れもいいところです。
そんな浅い認識だけでエロはエロであるからダメとか正直言って欲しくないというのが、読んでてずっと感じたことでした。


でまぁ批判ばかりするのもなんなので、逆によかった点ですが、ツンデレという用語を作者なりに定義して見せた点。その定義が正しいかどうかは別として、話を進める過程で現代文化の再定義を行った意欲的なところは好印象でした。
ツンデレとは外的なパーツ(ツインテールやらそっぽ向いてるとかね)でも内的なテンプレ表現(べ、別にあんたのために〜とかね)でもなく、「しょうがないなぁと思う観察者の心である」と定義したことは素晴らしかったと思います。もちろんこれに対しても意見はあるでしょうが、ツンデレというありふれているけれども定義のあいまいな現代用語の概念を、作者なりに納得のいく形でストーリーに絡めながら定義して見せた点は非常に評価に値すると思いました。
それとちこたむ好きなので絵はとても良かった。


という訳で、評価はずばり50点。設定が脱力感満載なのと、エロの排他的否定には断固抗議するものの、ツンデレを定義してみせたことで個人的に大幅ポイントアップ。ちなみに無かったらリアルで10点とかつけたくらいに話は全く面白くありませんでした。
そういう訳であまりお勧めは出来ません。
以上、ゲームといえばエロゲー、同人といえばエロ同人しかほぼ買わないぱにーに(=゚ω゚)ノの偏見に対する絶え間ない闘争の一幕でした。
終わり。