荒瀬はるか、容赦なし!

著/熊谷雅人 イラスト/魚 レーベル/MF文庫J

退魔師の名門の家系に生まれながら恐怖心から戦えず落ちこぼれの烙印を押された主人公が、ヒロインたちと力を合わせながらその才能を開花させていくお話。
序盤は相手の気持ちを慮らず自己中心的な言動に終始するヒロイン荒瀬はるかの態度にイライラが募ったものの、最後の最後で実は全て相手にとってプラスになる行動ばっかりだった事に気付いたんで、若干最後だけ好印象。あくまで「若干」なのはそこに行くまでの言動が余りにキチガイに過ぎるから。と言う訳で荒瀬はるかちゃんをカテゴライズするならツンデレに入ると思います。ただ、量産型のなんちゃってツンデレとは違って、ツンが長くて強烈かつデレがほとんどない(あくまで結果だけ見たら相手に利益があるってだけ)ので、ツンデレの中でもかなり特殊。ツンデレに気付ければまぁそこそこ読めます。


で、ちょっと気になった点をちょろっと。
この作品のように自立してない子供を主人公にしている場合に問題になるのが、親を含めた家族の存在です。特に本作のように退魔師などの特殊技能を継承している主人公においては、多くの場合親は主人公よりも強いことが多く、物語上どうしても親が居てもらってはまずいわけです。親に頼んだら主人公が頑張るよりもはるかにスマートにスピード解決しちゃうからね。
そんなわけでラノベギャルゲの世界では往々にして親が子供だけを残して長期間家を空けていたりするのが一般的で、エロゲともなるとさらにそこに女の子を家に連れ込む時に居てもらっては困るって理由も入ってきたりします。
最近読んだラノベだと魂振の練習曲なんかが親が居ない例で、退魔師の家系に育った主人公は、父親が戦いの道具として使い潰されて死んだことから家を継がないことを決心して、それが話の本筋に絡んできます。主人公よりも強い親を不自然にならないように、むしろ本筋と絡めながら物語から退場させたのはなかなか見事な手法でした。
http://d.hatena.ne.jp/kyoyatouko/20091021#p2
逆に親がいるせいで物語が破綻してしまったのがとぅうぃっちせる!。魔法使いとして超高性能な母親が、多くの人命がかかっている場面で、その危機を知っているにも関わらず手助けすらしません。そのくせ「我が家は代々この地区を管理し守ってきた魔法使いなんです(`Д´)キリッ!」とか言いだすので、読んでて悲しくなります。
http://d.hatena.ne.jp/kyoyatouko/20090809#p4
閑話休題
本作も父と姉が退魔師の名門の名に相応しい非常に強力な退魔師であるにも関わらず、多数の人命のかかった場面で全く関与しないせいで、あまりにも得心の行かないストーリーになってしまってます。謎の多い強い敵がいて、何よりも人命を最優先しないといけない状況で、未だ化け物を一匹も狩っていない未熟な退魔師である主人公が、非常に近しい位置に居て強力な退魔師でもある姉に相談すらせず、親に頼みもせず、自分たちの力だけで解決しようとするのは余りにも構成が稚拙と言うか無理があると言うか、筋が通ってないと感じました。
その辺の作りこみの甘さが非常に大きなマイナス要因でした。
以上、ちょっと真面目な考察。たまにはこういうのもありかな、みたいな(=゚ω゚=)