僕の知らないラブコメ

著/樫本燕 イラスト/ぴょん吉 レーベル/MF文庫J

MF文庫J11月新刊。
第13回MF文庫Jライトノベル新人賞《最優秀賞》受賞作。今季の新人賞のナンバーワンです。
面白かった。
「絶対彼女作らせるガール」も面白かったし、今季の新人賞組いいやん、MFの未来は明るいよ。
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真面目で努力家だった中学時代の苦い経験から、高校では適当にやって結果がそれなりなら人生それでいいよね、とダラダラ生きてた主人公・芦屋勇太。
ある日突然、時間をスキップしてしまい&なんとなくその結果も上手くいく時間跳躍のチート能力を手に入れ、面倒事があるたびに時間をスキップしていきます。
しかしその間の記憶は失われている上、数時間のハズが数か月飛んでしまったりとおもうようにいきません。
さらにその間に彼女ができていて、彼女と自分の間に自分だけが覚えていない大切な思い出ができていたり。
それでも彼女は可愛いし適当に話をあわせて生きればいいと思っていたら、どうでもいいことでスキップした時に意図せず派手に時間が飛んでしまい、どうやら彼女との大事な約束をすっぽかしてしまったようでした。
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このあと物語の根幹にかかわるネタバレをしているので読む予定のある人はスルーしてくださいね。
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すっぽかしたせいで険悪な関係になっても、しかしそれでも変われなかった主人公。
そんな主人公の態度に怒るよりもむしろ悲しんで涙した彼女を見て、そこで初めて自分がしたことの意味に気づき、彼女にまっすぐ向き合って自分の想いに気づいた主人公が、チート能力なしでもう一度、彼女の心をつかみよせる一歩を踏み出す、そんなお話です。
努力に意味を感じなくなった主人公が、ヒロインとの交流でもう一度努力することをやりはじめます。
青春して成長する主人公とかいいやん。
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往年の名作エロゲ「D.C.〜ダ・カーポ〜」と似たテーマのお話ですね。
ダ・カーポも、お婆ちゃんに与えられた魔法に頼っていたヒロインたちが、魔法というチートを捨てて、ゼロから今度は自分の足で一歩を踏み出すってのがあの作品全体を通してのテーマでした。
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そんな感じで、最近はやりのチート能力付与型主人公へのアンチテーゼでもあったのかな。
人によってはチート能力を絡めずに割とちょろくヒロインとよりを戻した展開に物足りなさを感じるかもしれませんが、ボクは古き良きサーカス信者だったので、こういうお話は好きです。
というかヒロインが主人公に対してべた惚れすぎだから、超カッコいいところ見せられたらそりゃ元鞘ですよ元鞘。
許せないけど好きなんだもん。