バーガント反英雄譚 3 揺れる王都の騎士姫君

著/八街歩 イラスト/珈琲猫 レーベル/富士見ファンタジア文庫

ファンタジア文庫9月新刊。
前半は王宮詰めから騎士学園防衛任務へと左遷された義妹ソフィーと、ソフィーのいいライバルで左遷の原因を作った事を気に病むリュリシアとの微妙な関係を主人公シュンが取り持ってあげて、ヒロイン同士が友情で結ばれる学園青春ファンタジー
そのまま絆を深めるイベントが後半発生して学園ハーレムできゃっきゃうふふするのかと思ったら、後半からは別作品ってくらいに激しく物語が動きます。
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両親の復讐に燃える義姉モニカ。
四天劍を招集してモニカ捕縛した王国第一騎士団長ペルデが、彼女が魔王の娘であることを知り魔族への宣戦布告として公開処刑することを宣言します。
これによって30年前に終わったはずの、互いに相容れない人間vs魔族の殲滅戦の火蓋が再び切って落とされることになりました。
一連のあれこれは耄碌しかけの国王に代わって実権を握ったペルデの事実上のクーデターかと思ってたら、王国の王様が実は魔族で、衰えた振りをしていただけという驚きの展開に。
今後の魔族との全面戦争を命に代えても成し遂げると決意を述べに来たペルデが意気揚々と退出した後、別人のように生気を漲らした国王が、

「戦争は、三十年前、とっくに終わっているのだよ……魔族の勝利という形でな」

とつぶやいて4巻に続きます。
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国王が魔族ってことは、もちろんその子供であるダブルヒロインの1人王女リュリシアも魔族って事ですね。
魔族は姿かたちが人間と変わらないため、当の昔に人間社会に溶け込み普通に生活していたのでした。
騎士学園でシュンの担任だったミュスカ先生も魔族で猫をかぶっていました。相当数が人間社会の中にいるようです。
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そんなこんなで激動の後半を経て、次の4巻で第1章「モニカ編」が終了。
どうやら30年前の戦争に関して人間側には相当後ろ暗いことがあるみたいです。
タイトルも「反英雄譚」だし主人公は魔族側に近い立ち位置で戦うのでしょう、魔族側というよりも人間と魔族が共存できる世界を作るため、でしょうけど。
モーレツな展開だったので次巻がとても楽しみです。