とらドラ!6

竹宮ゆゆこ(著)、ヤス(イラスト)、電撃文庫 2007-12-10

とらドラ! (6) (電撃文庫 た 20-9)

とらドラ! (6) (電撃文庫 た 20-9)


*ネタバレ有り


行動よりも心理描写に重点を置いた構成の第6巻。この作者の作品自体最初からそういう方向性な訳ですが、特に6巻はそんなテイストが強いです。なのでどこかに行ってみたり新キャラが出てきたりってのはありません。強いて新しい要素を挙げるなら生徒会長選挙くらいでしょうか。


でも生徒会長選挙における北村の成長物語は、あくまで物語の主たる要素に過ぎず6巻の究極的な本質では無かったと思います。もちろんスピンオフでも無い本編のストーリーが、北村の話だけで終わる訳が無いのは読む前から分かっている訳ですが、北村が急に非行に走った問題を解決していきながら実乃梨の「――ずるい、ん、だよ」などのセリフでしっかり伏線を張っておいて、最後の本筋の竜児・大河・実乃梨・亜美の関係に持って行く構成力は、さすがに人気作家らしい力強さと美しさを感じました。
最後の最後、第6巻で描きたい事が集約されてるといっても過言ではない亜美や実乃梨の描写によって間接的に大河の竜二への想いを描いた所は、本当におすすめです。


そのラスト部分で特に印象に残った「――罪悪感は、なくなった?」と言う亜美のセリフ。
もちろん6巻では作者の考えは公開されてないので推測な訳ですが、P100くらいで「ずるい」と独白しラストで亜美が指摘した実乃梨の抱えていた罪悪感とは、親友である大河の竜児への秘めた想いを知りながら、竜児に心惹かれる自分の気持ちがあるせいでそれを指摘できない事に対する罪悪感、みたいな感じではないでしょうか。


竜児を好きな筈の大河の生徒手帳に北村の写真が入っていることが不可解

もし本当に自分の勘違いで大河が北村を好きだったのなら、自分は竜児を好きになってオッケー?

亜美にその心の揺れを指摘される

指摘した亜美も、竜児に好かれてる実乃梨に嫉妬などから言うつもりも無かったのに言ってしまった。そもそもわざと距離を取って見ているだけで、ぶっちゃけ竜児が好きだと自覚しているから。


この場面に限らずこういった心の動きを直接的にはほとんど描写せずに、状況や伏線から読者に読み取らせようとする手法は、ライトノベルっぽくないというか、この人の高い表現力の象徴だと思います。



そういう訳で第6巻に来て、物語は大きく動き始めました。
わたしたちの田村くん」の作者という事を鑑みれば、おそらく大河は実乃梨に負けるでしょう。同じ結末にならない様にするって考え方もあるとは思いますが、こと結論に至っては筆者の絶対的な価値観に基づくと思うので、殊更に逆になる事は無いのではないかと思いますです。

そういうわけで佳境に入ったとらドラ!シリーズ。
次の巻も非常に楽しみです。



最後にこんな長い素人批評を最後まで読んでくれてありがとうございました。
長い感想書く奴は分かってない奴ってよく言われますが、それでも書きたいと思うほど面白い作品でした。このシリーズ知らない人がいれば是非1巻から読んでみてください。ぱにーに(=゚ω゚)ノがそう自信を持って勧められる1つなので。